第8位	The North Face Banchee 65
	ザ・ノース・フェイス バンチー65

メーカー

良い点

・わずか1640gの重量はULキャンパー向け
・各コンプレッションストラップは長さに余裕があるので外付けが楽
・「ビーバーテールポケット」でフレキシビリティの高い収納性
・２つの大きな「バーティカルポケット」すぐに出したいものはここ
・ボトムアクセス
・チェストストラップにはエマージェンシーホイッスル付き
・ベンチレーションが良い
・プルフォワード式ウエストベルト
・とても大きなヒップベルトポケットは両サイドに

悪い点

・軽量化のために各ストラップ類は細め。耐久性は十分とはいえません。
・バンチー50と同じサイズのバーティカルポケットはもう少し容量が欲しいところ
・ボトムの生地は210Dなので耐久性が少し心配
・トルソー調整が少しやりづらい

耐久性（Durability）

North Face Banchee 65は60ℓを超えるクラスのパックにもかかわらず本体重量は1,640gとライトウエイト。それはThe North Face Banchee 65のメインファブリクスは210Dと、同じミドルサイズの他のパックに比べ薄手の生地だから。また全ての生地が210Dジオリップストップナイロンなのも特徴的。

一般的にバックパックはボトムなど強度が必要になる部分は厚手の生地を使い、あまりストレスのかからない部分には薄手の生地を使用するなど、無用に重量を増やさぬよう適材適所な素材が配置されているものです。(例えばクレゴリーバルトロ65はボトムが630D高密度ナイロン、一方で裏地は200Dポリエステルなど)

決して210Dという生地が弱いというわけではないのですが、やはり厚手の素材の方がより安心感があることも間違いありません。

また重量をできるだけ軽くするためなのか、各ストラップは他のパックに比べてより細く薄くなっているのと、バックルも小ぶりなものになっています。

一般的に同じ素材を使った場合、耐久性と重量はトレードオフの関係にあります。必要以上に耐久性を高くした結果重くなってしまったり、耐久性を犠牲にしてまで軽量化するのもギアの扱いに慣れたベテランユーザーを対象としない限り良いとは言えません。その点このBanchee 65は極端に軽量化されているわけでもなく、耐久性と重量とのバランスが割と上手くとれているのではないかと思います。

背負い心地（Comfort）

背負い心地のコントロールテストは20Kg、23Kg、25kgの３種類の重量で行いました。結果からいうと重量20Kgの時点で、すでに背負い心地は悪かったのが正直な感想。



というのも実はこのバンチー65、１つ容量が下のバンチー50とショルダーハーネスやヒップベルト、さらにはフレームまで素材や厚さ、デザインなどが全く同じなのです。当然背負い心地はバンチー50と同じになるはずなのですが、容量が15ℓ増えた分の荷物の重量は増えてしまうということで、主にショルダーハーネスやヒップベルトが容量分の増えた重量に対応しきれなかったのが原因。バンチー50は容量と背負い心地のバランスが取れているとても良いパックだっただけに残念でならない点です。(参考までにバンチー50のレビューはこちら）

とはいえ、重量18kgくらいまではとても快適に背負えますので、この重量を超えないようにパッキングを工夫するテクニックが必要にもなります。

詰め易さ（Packability）

このパックの魅力はなんといってもその収納性の高さ。その中でも特に特徴的であり魅力的な収納の1つがパック正面にある２本のバーティカルポケット。レインウエアや帽子など比較的使用頻度が高くすぐに取り出したいものや、ファーストエイドキットなど使用頻度は高くなくともここぞという時に素早く取り出したいものの収納にまさにぴったり。





これがあるとメインコンパートメントを開ける機会が少なくなるので、雨天時にパック内を濡らさなくて済むことや、収納の際にいちいちパッキングし直さなくて済むので非常に楽でもあります。またジッパーの引手もつかみやすいので、グローブをしていても開け閉めはストレスフリー。とてもお気に入りの収納の1つ。

もう1つが「ビーバーテイルポケット」と呼ばれるメインコンパートメントとバーティカルポケットの間にある収納。これはサイドコンプレッションストラップと連動して動くので、大きさ・形に関係なく色々なものを収納できます。たとえばヘルメット、アイゼン、テント場で履くためのサンダル・・・などなど、なかなかメインコンパートメントに収納しづらく、また使いたい時にすぐに取り出したいものの収納に特に重宝します。



サイドコンプレッションベルトと連動して動くことで、荷物の多い少ないに関わらずしっかりとコンプレッションしてくれます。とてもフレキシビリティの高い収納です。）

ボトムストラップをはじめ各ストラップは長めの設計で、CCフォームマットもボトムはもちろんのこと、サイドコンプレッションストラップにも取り付けが可能なほど。

またパック両サイドのウォータボトルホルダーはストレッチメッシュでホールド性が高く、ボトルを入れた状態で屈んでも滑り落ちてしまうこともありません。



ヒップベルトポケットも両サイドにあり、またしっかりと容量が確保されているので、アウトドア用のやや大きめのデジカメ、行動食、スマホなどを収納するのに便利なのも見のがせない点です。



さらには50ℓモデルのバンチー50にはなかったボトムアクセスも追加されています。

強いてイマイチだった点をあげるとすると、ベンチレーションを確保すべくアーチ状にされたパック背面は、角ばったものやテントポールのような長いものの収納には苦労することが多いです。

またこのバンチー65は同じモデルのバンチー50の容量設定が1つ上のパックになるのですが、バーティカルポケットやビーバーテイルポケット、その他の収納の容量がバンチー50と全く同じ。メインコンパートメントの容量に比例して各収納の容量も増やしてくれていたらさらに良かったのに、と収納性が非常に高いパックなだけに悔やまれるポイントではありました。

ユーザビリティ（Ergonomics）

前述したように全体的にポケット類のアクセス性・収納性が非常に高く使いやすいのが特徴なのに加え、各ストラップ類、バックルもストレスフリーな使い心地の良さ。特にジッパーは引手が大きく、グローブをしていても開閉が楽にできるのが良い点です。
唯一、レインカバーが標準で付属されていなかった点が残念というか惜しい点でしょうか。

重量（Weight）

60ℓを超える大型パックにもかかわらず重量はわずか1,640g。このクラスでは2,000gを優に超えるモデルがほとんどの中、この軽量さは少しでも余分な重量を削減したいライト&ファスト志向のハイカーにはきっとアドバンテージになるはずです。

まとめ

50ℓモデルであるバンチー50の出来が非常に良かったこともあり、かなり期待度の高かったバンチー65。いざテストしてみると「メインコンパートメントの容量が大きくなったバンチー50」と呼べるほど基本的なデザインは全く同じのパックで、逆に容量が増えたことによりパッキング時の総重量が増した分、容量相応の重量を快適に背負えなくなってしまったことのデメリットが目立つ結果になったしまったというやや残念な結果に。

確かに1,640gという重量は軽さを追求するハイカーにとって魅力的ではありますが、背負い心地を犠牲にしてまでの軽量化は、逆にデメリットも多くなることを再認識させられるパックでもありました。そういう意味では、あと200〜300g重量が増えてもよかったので、より重い荷重を支えるためのショルダーハーネスやヒップベルトに設計されても良かったのではないかと思わざるを得ません。とはいえ総重量18kgまでなら快適に背負えることができるのも事実ですので、パッキングに慣れたベテランハイカーならこのパックの軽量さと容量を十分活かせられるのではないでしょうか。
逆に20kgを超える重量になるのであれば、同じクラスのパックの中でもGregory Baltoro 65、またはOsprey Atmos AG 65のほうが快適な背負い心地が得られるので、こちらの方がオススメになります。