第21位	Millet Khumbu 55+10
	ミレー ・クンブ55+10

メーカー

良い点

・大きくU字に開くフロントアクセス
・大容量のサイドポケット
・ストレッチメッシュサイドポケット
・中身が落ちにくいトップリッドポケット
・大容量のフロントポケット
・トップリッド内にレインカバーを収納
・トルソー調整はワンタッチで簡単

悪い点

・ベンチレーションが悪い背面構造
・硬くてクッション性のないショルダーハーネス
・背面下部は滑りやすくパックがずり下がりやすい
・ウエストベルトポケットはなし
・薄くてあまりクッション性のないウエストベルト
・１本しかないボトムストラップ

耐久性（Durability）

本体は420Dのハニカムナイロン、また強度が必要なボトムの素材には1000Dのコーデュラナイロンなど、全体的に丈夫な生地が使われています。よほどハードな使い方をしない限り問題はなさそうなのと、逆に言えば軽量な割に耐久性が高いとも言えます。またパックの各部を見渡してみても、耐久性を犠牲にしてまで軽量化されているようなところは見受けられなのにもポジティブな印象を受けます。

背負い心地（Comfort）

テストするまでは本格アルパインメーカー、ミレーの手がけるバックパックということもあり、なかなか期待していたのですが、背負い心地に関しては少々期待はずれな部分が多く、厳しい評価にならざるを得なかったのが正直なところです。

まずはヒップベルト。ヒップベルトは大型パックにしては驚くほど薄く、締め上げたときに痛みこそ感じないもののホールド性はイマイチ。加えてパック背面に施されたメッシュ素材は全体的に滑りやすく、ヒップベルトをいくら締め付けても歩いているうちにズレて下がってきてしまい、なかなか腰でパックを背負うことができません。特にパックの重量を重くした時は、背負った直後からパックがすぐに下がってきてしまい、結果として肩にかかる負担が徐々に増えるので、疲労感が大きくなってしまうのが難点です。またロードリフトストラップも取付位置が低すぎてショルダーハーネスを十分に引き上げる効果がないのも肩への負担が増えてしまう原因になっています。



次にチェストストラップ。これも他のメーカーの一部のモデルに見られたのと同じく、海外向けの向けのモデルなのかもしれませんが、小柄な日本人にはチェストストラップの締め代が若干不足気味。ショルダーハーネスを十分に引き寄せられないので腕の動きが妨げられているような感じがします。またハーネスが腕の付け根に当たり若干違和感を感じるのもマイナス点です。



次に背面について。背面にあるトルソー調整システムはバックル式でワンタッチでトルソー調整ができる反面、そのバックルの位置が問題。背負った時にバックルがちょうど背骨の位置になるので、パックの重量が重くなるに従いバックルと背骨が当たり、痛みこそないもののなんとも違和感があり、決して褒められたものではありません。



本格アルパインメーカー、ミレーのパックということで期待が高かったせいか、不満点ばかりが目立ってしまいました。決して使用できないほどではないのですが、あまり荷物を詰めすぎて重くしてしまうと、違和感や疲労感が出てくるので快適とは言い難いのも事実です。個人的にはパックの重量は重くても約17Kgくらいまでに抑えたいところです。

詰め易さ（Packability）

背負い心地はイマイチな点が多かったKumb 55+10でしたが、パッキングのしやすさに関してはまずまず。パック背面はカーブがほとんどないので、テントやセルフインフレータブルマット、寝袋など多少大きくかさばるものも詰めやすく、また＋10ℓのエクステンダブルトップのおかげで収納には余裕があります。



Khumbu 55+10の収納の最大の特徴が大容量のサイドポケット。１ℓのナルゲンボトルを入れてもまだまだ余裕が残るほど容量的に余裕があり、アクセス性も高いので使用頻度の高いギア類をどんどん収納できます。

次にフロントアクセスとボトムアクセス。どちらもフロントからガバッと大きく開き、中のものが一目瞭然で使い勝手が良いです。突然の雨でレインウエアを取り出す際や、テントの設営時にボトム付近にあるテントやマットを取り出す際にその良さを実感できるでしょう。

ユーザビリティ（Ergonomics）

次にユーザビリティについて特徴的なところをいくつか。まずはトップリッドポケット。ポケットは２つあり、上向きに口が開く方のポケットは容量は少ないものの、開けたときに中のものが落ちにくく特に小物類の収納に便利。またメインのポケットは横開きですが、大きく開くので中のものが見やすいです。付属のレインカバーはこのポケットに収納されています。



サイドポケットはメッシュ素材で入口のみストレッチになっています。最近にしてはやや古臭いデザインかもしれませんが、深さは十分ありますので、ウォータボトルを入れてもしっかりとストラップを締めておけば屈んだ時に滑り落ちてしまうことはなさそうです。



フロントアクセスやボトムアクセスのジッパーのツマミは、ミレーのパックに共通する独特の形状で指によくフィットし、また大型なので厚手の手袋をしていても使いやすいです。



驚いたのがボトムストラップ。なんと１本しかありません。マットを留めた時に安定しないのではないかと思いましたが、意外にもきちんと留まってくれます。



逆に残念だった点がヒップベルトポケットがないこと。デジカメやスマホ、ちょっとした行動食など、パックを下ろさなくてもアクセスできる収納がないのはマイナス点でしょう。



トルソー調整は背面パッド下のストラップで調整します。簡単に調整できて良い反面、背負い心地でも書きましたが、ストラップ調整用のバックルが背中に当たり快適とは言えないのがもったいないところです。

重量（Weight）

平均的な65ℓクラスのパックの重量は2,000〜2,500ｇくらいが多い中で、2,070gのこのパックは比較的軽量な部類に入ります。それでもボトムの素材に1000Dのコーデュラナイロンが使われているなど、耐久性が必要な場所はそれ相応の素材なので安心感があります。

まとめ

ミレー・クンブ55+10ヒップベルトポケットがない、背負い心地にやや難ありなどランキング上位のパックに比べると細かなところを含め不満な点は多いものの、それなりに軽量でパッキングしやすいなど基本性能はしっかり。逆に大容量のサイドポケットや使いやすい形状のトップリッドポケットなど、他のパックよりユーザビリティに優れ好印象だった部分さえあります。

どのようなシーンにオススメかというと、２泊から３泊の山小屋泊。またボトムストラップやサイドストラップ、ギアループなど外付けが必要になるようなテント泊や冬季のアクティビティにもしっかりと対応しています。背負い心地はランキング上位のモデルに比べるとやはりどうしても劣っていると言わざるを得ませんので、パック重量をそれほど重くしないことを前提として使用することをオススメしたいモデルになります。